転載元:zeraniumのブログさんより
強行採決「秘密保護法案」で「福島原発危機的状況」は隠されている
本書でこれまで見てきたように、現在の日本は四方を危機に取り巻かれている状況です。そのために防衛力の増強などが、安倍政権の方針として打ち出されています。もちろん日本が国家としての自立や独立を守るためには、自衛力を高めることは大切なことです。しかし「軍事力」にばかり力を入れるのは、「戦争の勃発」を招きかねないことでもあるのです。政府として探るべき方向は平和外交こそが原則であり、またアジアの平和を守るために、日本は独自の自衛力を構築する必要があります。
つまり現在の危機をサバイバルするためには、「戦争」によってではなく「平和」によってであることは明白であり、近隣の国々やアジア諸国、その他の国々との相互理解が基本であることは言うまでもありません。そして日本国民みなが、自立心と独立心を持ち、自分の国を愛する心をしっかり抱くことこそが基本です。安倍政権の指針である「国家安全保障戦略(NSS)」には、次のように書かれています。
「諸外国やその国民に対する敬意をあらわし、我が国と国土を愛する心を養う」
これは「国と国土を愛する心」、すなわち「愛国心」がはじめて「安保戦略」に盛り込まれたのですが、必要なことは言葉に表すだけではなく、国内の教育や日常生活の中で自立する心を身につけることができる、環境を整えることこそが先決です。新たに「国を愛する」という言葉だけを盛り込んだところで、「安保戦略」から受ける印象は、他の国と対決する覚悟を決めなさい」と言っているようなきな臭さを感じます。
安倍政権は、特定秘密保護法案の強行採決、原発輸出推進、原発再稼動、消費税増税などを初めとする政策の進め方を見ていると、「日本国民に対する敬意」があるとはとても思えません。次いで安倍首相が強調しているのが、「積極的平和主義」というキーワードですが、この言葉は「イラクを民主化する」と称してアメリカによって始められた、あの間違ったイラク戦争を思い起こさせてかなり不気味に感じます。
そして同時に打ち出されたのが、原発を「基盤とした重要なベース電源」と位置づけたエネルギー基本計画です。かつて民主党が掲げた「原発ゼロ」の方針を180度転換し、他にどのような発電があろうとも「原発が基盤だ」というのです。しかし原発推進がモロに出ているのはまずいということで、「基盤」の代わりに「重要なベースロード電源」と言い換えはしましたが、原発推進であることに変わりはありません。
これは後述しますが、明らかにこれは安倍政権発足前の選挙公約違反です。
国民には知らされていませんが、福島第一原発の事故が3年経過しても収束できず、それどころか悪化の一途をたどっているというのに、しかも今なお13万人以上の福島県の人々が避難生活を余儀なくされているというのに、再びそうした危険の起きる可能性があるのに、「原発こそが重要なベース電源」だというのです。言語道断とはこのことでしょう。
プルトニウム溶液と高レベル廃液による『大爆発の危機』がある
特定秘密保護法案の強行採決が成立する裏で、とんでもない事態が茨城県の東海村で起きていることが曝露されました。それは再処理によって発生したプルトニウム溶液が、爆発する危険性が高まっているという事実の公表でした。この工場は日本原子力研究開発機構(JAEA=原子力機構)の再処理施設で、核兵器の材料ともなるプルトニウムを取り出す施設です。この再処理の結果、副産物として生み出されるのが、殺人的レベルの放射能を10万年以上出し続ける高レベル放射性物質であり、それが延々と生み出されるところです。
このシステムの名目上の目的は、福井県の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」などで使用される、プルトニウム・ウラン燃料(MOX燃料)用にプルトニウムを抽出するためとされています。しかし実際には肝心の「もんじゅ」は、1995年のナトリウム爆発事故以来まったく稼動することができなくなり、計画は「白紙」とされました。しかしながら「白紙」とはなっても、ナトリウムを循環させて冷却する「運転費用」が”毎日”5000万円かかるという、驚くべき無用の長物なのです。さらにMOX燃料は、福島第一原発事故で3号機に使用されて、水素爆発によってプルトニウム汚染を世界中にばら撒く結果となった危険なものなのです。
さらに怖ろしいのは、本来プルトニウムは液体からMOXの粉末にして保管し、高レベル廃液はガラスで固めて保管しなければならないのに、東海再処理工場では、機器の故障で2007年以来処理できずに、液体のまま放置されているという事実です。(ドイツでは固めて地中深くに埋めて保管している) こうしたことなどもこれまで一切が、報道も報告もされることがありません。まさに、「原子力の隠蔽体質」「秘密主義」そのものです。
実は原子力規制庁が調査した結果、地震などで事故が起こって安全装置が故障した場合、核燃料を再処理した高レベル廃液は55時間で沸騰し、放射性物質を大気中に飛散させることがわかっています。さらにその時水素が発生し、38時間で水素爆発するということです。そしてプルトニウム溶液は事故後23時間で沸騰し、11時間で水素爆発することが曝露されたのです。
この施設を保有している原子力機構は、この危険な高レベル廃液をこれから20年かけてガラスで固め、液体プルトニウムのほうは1年半でMOX粉末にする計画だと言っていますが、しかしこれまですでに何年も放置されていて少しも進んではいません。それを進めるには処理施設が原子力規制庁の新たな基準に適合する必要があるのですが、それを待っていたのではあまりにも危険な状態のため、規制庁は処理開始を例外として認めました。なぜならいつ放射能漏れや水素爆発が起きても、不思議ではない状態にあるからです。
プルトニウムは国家の安全保障に直接かかわる核兵器製造用物質なので、秘密保護法が施行されると、こうした事実も国家秘密として隠蔽され、原子力による苛酷な事故が起こる危険も国民には知らされることはありません。この「原子力の特定秘密扱い」の問題も重大なことですが、実はそれ以前にある問題は、その施設がある茨城県東海村でプルトニウムや高レベル廃液の水素爆発事故がもし起きると、隣の福島県の第一原発、第二原発の冷却・廃炉作業も放射能汚染の拡大で継続不可能になります。
そして再び、東北・関東一円が苛酷な事故で放射能汚染され、数千万人が避難を強制されることになります。東海村から100キロほどの東京都心は、皇居も国会周辺も人は誰も住めなくなるでしょう。このなんとも脆(もろ)くて危(あや)うい原子力産業・原発を、地震多発国である日本でこれ以上継続するのは不可能だと、再び痛感させられる緊急事態なのです。この事実は新聞等ではごく小さく扱われただけで、ここまで逼迫(ひっぱく)した事態であることは一般にはまったく知らされなかったのです。すでに、戦時下の情報統制が始まっているようです。
IAEAは「汚染水を放出すべき」と助言し、地球規模での汚染を拡大させた
福島第一原発の1号から4号の廃炉も、汚染水処理問題をはじめ、完全に行き詰っています。東京電力は廃炉に40年かかると言っていましたが、実際には早くても70年以上かかることが明らかになっています。つまり、現在の責任者や監督者は、その完了を生きている間に確かめることはできないだろうということです。東電はアメリカが長崎に投下したプルトニウム型原爆を製造した、軍事核施設の廃炉技術の導入を検討しています。約70年間、原子炉を密閉し、チェルノブイリ原発のように「石棺」で葬る方式か、40年間で廃炉完了というこれまでの話とは大幅に食い違ってきます。
国際原子力機関(IAEA)は、「基準値を下回る汚染水は海に放出するべき」と助言し、地球規模での核汚染の拡大を推し進めました。これはアメリカやロシアをはじめ、核保有国が過去に行なってきた常套手段なのです。現在にいたるも福島近海は、漁業がまったく再開できない状態なのに、さらに「汚染水を放出すべき」と助言する国際原子力機関(IAEA)の正体が分かろうというものです。つまり、原子力産業を推進するためなら、漁民の生活や市民の健康がどうなってもいいのです。
福島第一原発事故は依然として収束してはいないばかりか、汚染水問題はいよいよ危機的状況にあります。2014年1月には、3号機で原因不明の汚染水流出が新たに確認されました。それは遠隔操作のロボットによるカメラ画面でわかったものですが、極めて高濃度の汚染です。地下水を観測するために掘った井戸からは、2013年末に210万ベクレル(1リットル当り)、2014年1月には220万ベクレルの放射能が検出され、その後240万ベクレル、270万ベクレル、さらに500万ベクレルと上昇傾向にあります。汚染は低下するどころか、ますます集約されて線量が上がっているのです。敷地内の大量のタンクに溜められた汚染水も、「コントロール」されてはいません。
世界は日本政府の「ウソ」を知っている
福島第一原発にはまだ最悪なシナリオが起こりうる状況なのに、「東京オリンピック開催」で浮かれている日本のマスコミはまさに狂っています。「東京オリンピック招致」で世界が注目したのは、日本政府の「ウソ」です。安倍首相は「福島第一原発の状況はコントロールされている」「日本のどの地域にも健康問題にかかわる放射能は、これまでも、今も、そして将来もまったく問題ない」、とIOC総会のスピーチや会見で「ウソ」を繰り返し、東京へのオリンピック招致に至りました。
今や誰もが知っているとおり、福島第一原発では高濃度の放射能汚染水が、数百トンから1000トンの単位で毎日太平洋に流出し続けています。福島県内では甲状腺ガンの子どもが増加しています。東京での事故直後、上水道まで汚染されたことは周知の事実です。しかも現在、3号機は時おり、白い水蒸気のようなものを噴出させ、その水蒸気がなぜ噴出しているのか原因がわからないのです。メルトダウンし、メルトスルーした3号機内部の核燃料が再臨界している可能性があるにもかかわらず、高い放射線のために調査すらできない現状なのです。
2号機のメルトスルーした核燃料は、地下深くに流れ込み、地下水と接触していると疑われています。つまり、「福島第一原発事故は、現在、極めて危機的状況にある」というのが真実であり、現場では必死の作業が行なわれていますが、手の施しようがまったくないというのが隠された実情なのです。
海外から見た場合、福島第一原発での高濃度の放射能汚染水の海への流出は、東京が汚染されていることとイコールです。五輪関係者が「福島と東京は250キロも離れているから影響はない」と説明したのに対し、イギリスの記者ダンカン・マッケイ氏は、「250キロなどという距離は世界から見て、ないに等しい」、つまり、東京が安全だと納得できる説明ではないと批判しました。ヨーロッパの人々は、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故によって、欧州全体が汚染されるという危機に陥ったことを忘れてはいません。その時、周辺国は「放射能雲が流れてくる」ことを本当に恐怖したのです。
しかし日本では、東京など関東に住む人々のほとんどは、「福島とは離れているから安全だ」と思い込まされています。2011年末の野田前首相の「福島第一原発事故収束宣言」以来、マスコミの情報だけしか得ていない人々はほぼ完全に洗脳されているのです。何よりも13万人以上の福島の人々が未だに避難生活にあり、ふるさとに帰るメドさえ立たず放置されている現状で、東京にオリンピックを招致しようという発想が根本的に間違っています。
6年後の2020年、もし東京オリンピックが開催されたとしても、そんなオリンピックを「平和の祭典」などと言って心から祝福できるはずもありません。ドイツの有力新聞フランクフルター・アルゲマイネ紙は、「6年後に福島の状況が改善しているとは思えない」と批判しています。こんな状況で、「東京でオリンピックを開催していいのか?」という疑問がまったく報じられることのない日本のマスコミは、ある意図的な操作の中にあるのは間違いありません。
book 『闇の世界権力が「完全隷属国家日本」を強く望む理由』
中丸 薫著 ヒカルランド
抜粋
中丸 薫著 ヒカルランド
抜粋