米国債の格下げ懸念高まる―米政府債務交渉の決裂で

WSJ日本版:2011年 7月 23日 16:29 JST
http://jp.wsj.com/US/node_278316

【ワシントン】
 米政府債務の上限引き上げをめぐる政府と議会の交渉が22日に決裂、米国債が格下げされる懸念が高まっている。

 ホワイトハウスと議会は連邦債務の上限の引き上げに向けて大詰めの交渉を続けてきたが、共和党のベイナー下院議長は22日、オバマ大統領との話し合いを打ち切ったことを明らかにした上で、今後は小規模の赤字削減策を上院と協議する考えを示した。

 格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は今月中旬、米国債の格付け(長期AAA、短期A―1+)を「クレジットウォッチ・ネガティブ」に指定。米国政府の赤字削減策が将来的な債務増加に歯止めをかけるほど強固なものではないと判断した場合、米国債を格下げする可能性があると繰り返し警告してきた。連邦債務上限の引き上げ期限の8月2日までに合意が成立しても米国債が格下げされる可能性がある。

 財務省によると、期限までに債務の上限が引き上げられなければ、連邦政府の支払いがストップするという。

 オバマ大統領とベイナー下院議長は今後10年間で財政赤字を4兆ドル削減する案を軸に交渉を続けてきた。S&P幹部が格下げを回避するに十分な水準として示唆した水準だ。現在、米国の長期格付けは最高級のAAAだが、格下げされれば、政府だけでなく消費者や民間企業の借入コストも上昇、米国の経済成長が停滞する恐れもある。さらに、銀行や年金基金、投資信託、ヘッジファンド、その他の世界中の投資家が資産として保有する米国債の価値が下がり、金融市場が動揺する可能性もある。

 オバマ大統領は22日の夕方、S&Pが示した目標は達成できない小規模な合意を模索する可能性を示唆した。

 オバマ大統領は「財政赤字と債務を削減する真剣な計画を策定できず、今後6カ月、7カ月、8カ月と、債務上限を引き上げるだけに終始すれば、米国債が格下げされる可能性は増大し、経済に暗雲がたれこめることになるだろう。政府にとっても民間企業にとっても、国民が必死で求めている雇用を創出することがさらに困難になるだろう」と述べた。

 S&Pによる米国の「クレジットウォッチ・ネガティブ」指定は、米国債が90日以内に格下げされる可能性が50%あることを示している。米国は1941年からAAAの格付けを維持しており、格付けが1段階引き下げられて「AA+」とされれば、米国の格付けはシンガポールやリヒテンシュタインよりも低くなる。

 ホワイトハウス高官はS&Pが厳しい警告を繰り返していることから、来月にも米国債を格下げするのではないかとの懸念を強めている。S&Pはこれまで、4月と今月の2度にわたって、財政赤字の削減に合意しなければ格下げの可能性があると公式に警告した。同社のクレジットアナリストは政府高官や議員との非公式の会談でも、この点を繰り返していた。

 米国債格下げの見通しは政府高官にとって非常に大きな関心事となっており、ガイトナー財務長官とバーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長、ニューヨーク連銀のダドリー総裁は22日、この問題について協議した。

 近年、米国債が格下げされたことはなく、実際に格下げされた場合、経済的にどのような影響があるかははっきりしない。格下げされれば、政府の借入コストが増大するほか、投資家が米国債からドイツやカナダといった国の国債に動く可能性もある。

 金融市場では、債務上限の引き上げ交渉が、世界で最も信用力のある借り手としての米国の評判に、既に深刻なダメージを与えてしまったのではないかと懸念する声も上がっている。

記者: Damian Paletta
Copyright @ 2009 Wall Street Journal Japan KK. All Rights Reserved

出典・ウォール・ストリート・ジャーナル日本版
http://jp.wsj.com/US/node_278316

この記事へのトラックバック